スウェーデンってキャッシュレスの国だと聞くけど、実際そこで暮らしている人の生活ってどんな感じなのかな~?
世界一のキャッシュレス先進国、スウェーデン。
日本人からすると「え!そんなものまでキャッシュレスなの?!」とビックリしてしまうぐらい、キャッシュレス化が進んでいます。
スウェーデン在住歴が約10年になる私からみても、ここ数年の変化は特に目まぐるしい。
この記事では、最新のスウェーデンのキャッシュレス事情について、現地在住者の目線から詳しくレポートします!
驚きのキャッシュレス普及率を現地からレポート
スウェーデンでは、こんなものからあんなものまでキャッシュレス。
日常生活で出くわす身近なキャッシュレスの例をいくつかご紹介します。
公共交通機関のチケット
電車やバスの切符を買うための自動販売機では、現金は一切使えません。
一部の駅では現金で切符が買えますが、対応している窓口は限られています。
ストックホルムのバスについては、数年前までは運転手から現金でチケットを購入できましたが、現在では完全に廃止されています。
カフェ・レストランなどの飲食店
カフェやパン屋さんなど、小規模な飲食店では現金不可のところが増えています。
さすがにレストランで現金を一切受け付けないというところは聞いたことがありませんが、やはりカードで支払う人が大多数。
ジュースの自動販売機
「自販機を見つけたから、小銭でジュースでも買おうかな」というのも、スウェーデンではほとんどあり得ないシチュエーション。
地下鉄の駅には、ジュースやお菓子が売っている自動販売機が設置されていることがありますが、現金では買えません。
公衆トイレ
スウェーデンでは公衆トイレが有料で、お金を払わないと扉が開かない仕組みになっています。
1回の使用は10クローナ(約110円)程度ですが、その支払いも最近では硬貨からカード払い式に変わってきています。
スーパーマーケット
現金を取り扱っているのは、複数あるレジのうち一部だけというスーパーも多いです。
セルフレジを置くコンビニやスーパーも増えてきていますが、そちらは100%カード払いのみ。
駅のコインロッカー
駅のコインロッカーもカード払い。
もはや「コイン」ロッカーと呼べないですね。
子供へのお小遣い
お小遣いでもらった大事な100円を握りしめて駄菓子屋さんに…なんてことは、スウェーデンの子どもたちはしません。
スウェーデンでは、子どもにデビットカードを持たせ、親がお小遣いをそこに入金することにしている家庭も珍しくないようです。
たしかに、スーパーで自分のカードを出してアイスやお菓子を買う子どもをよく見かけます。
スウェーデンでは物乞いまでキャッシュレス!?
スウェーデンのキャッシュレス生活には十分に慣れている私でも最近ビックリしたのは、キャッシュレスの物乞い。
ストックホルムでは、小銭を恵んでもらおうと電車内を歩くホームレスの人をよく見かけます。
そのとき見かけたのは、自分の携帯番号を書いた紙を持ち、この番号宛てにスウィッシュして欲しいとお願いして歩く人の姿でした。
今では現金を持ち歩いている人がほとんどいないので、物乞いがキャッシュレス化するのも不思議ではないのかもしれません。
なぜ?スウェーデンがキャッシュレス先進国である理由 ・背景
スウェーデンでの日常生活に、キャッシュレスがいかに浸透しているかお分かりいただけたと思います。
さて、それではなぜこれほどまでキャッシュレス化が進んでいるのでしょう?
気になる理由はこちらです。
スウェーデンはもともと高度に発達したデジタル社会
その国のデジタル化がどのぐらい進んでいるかを示す指標(The Digital Economy and Society Index)によれば、スウェーデンはヨーロッパの中で第2位。
スウェーデンのキャッシュレス化が素早く普及した背景には、
というポイントがあったんですね。
政府や公共機関に対する国民からの厚い信頼
スウェーデン中央銀行は、政府や公共機関に対する国民の信頼が高いことも、キャッシュレス化を推し進めている要因であると分析しています。
キャッシュレス社会が成り立つためには、それを支える高度な経済的・技術的インフラが前提。
スウェーデン人はそうした社会の仕組みに対する信頼が強く、加えてITリテラシーも高い。
だからこそ、抵抗なく新しいデジタルテクノロジーを取り入れられるのだと考えられています。
送金アプリ・スウィッシュ(Swish)の爆発的な普及
スウェーデンのキャッシュレス化を語る上で欠かせないのが、スウィッシュ。
2012年のサービス開始以降、その利用者はあっという間に広がり、現在(2019年)では約700万人がスウィッシュを使っています。
このスウィッシュの普及によって、人々が現金を使う機会はさらに減りました。
特に小規模な商店(カフェやフリーマーケットの露店など)はスウィッシュによる支払いを積極的に導入しています。
個人間のお金のやり取りも、現金や銀行振り込みより早くて便利なスウィッシュが好まれています。
少額でもクレジットカード払いが歓迎されるスウェーデン
日本では、一定金額以上の買い物でないとクレジットカードでの支払いを受け付けてくれないお店が多いですよね。
でもスウェーデンでは、ジュース1本程度の小さな買い物でも、カードで支払うのが当たり前。
少額でもカードで支払えるので、現金を使う場面が少ないのです。
これを裏付けるのが、「次の金額を支払うとき、あなたは主にどの決済方法を使いますか?」との質問に対するスウェーデン人の回答(2019年のデータ)。
100kr(約1100円)以下のものを買うときですら、現金で支払うと回答したのは20%にとどまります。
近頃はオンラインで買い物を済ませる人が増えているので、現金よりカードの出番がいっそう増えてるということもあります。
日本人が驚く?スウェーデンのキャッシュレス比率
2025年には、スウェーデンの小売業の約半数が現金を一切受け付けなくなると予測されています。
この予想が決して大げさではないことは、次のデータを見れば納得できます。
スウェーデンの現金流通高は対GDP比で1.2%
2007年には1120億クローナあった現金流通量は、2018年には560億クローナにまで減少しています。
2018年の現金流通高のGDP比は、わずか1.2%。
これは、世界中のあらゆる先進国と比べても最も低い数字です。
スウェーデン人の決済手段の推移
スウェーデン中央銀行による調査によれば、直近の買い物で現金を使ったと回答した人の割合は、2010年には約40%だったのに対し、2018年には13%にまで減少。
また、過去1ヶ月間で使用した支払い方法については、現金の割合が年々減ってきているのに対し、スウィッシュによる支払いは増加し続けています。
現金をほとんど持ち歩かないスウェーデン人
スウェーデン国民1人あたりが銀行から引き出す現金は、平均して月にわずか740クローナ(約8000円)。
当然、スウェーデンの銀行も現金の取り扱い業務を縮小しています。
2011年以降、スウェーデンで現金を扱う銀行窓口の数は、半分以下に減りました。
キャッシュレス先進国スウェーデンで観光客が注意すべきポイント
日本とはかけ離れたレベルでキャッシュレス化が進むスウェーデン。
そんな国を旅行で訪れるときには、どんなことに注意すれば良いのでしょうか?
スウェーデンクローナへの換金はほどほどに
ここまで読んでくださった方はすでにお分かりのとおり、スウェーデンで現金が必要になることはほとんどありません。
ですので、日本円からスウェーデンクローナに換金しすぎないことをおススメします。
もしスウェーデンのお金が余ってしまっても、ほかの国では使えません。
次に旅行するときまで取っておけばいい?
いやいや、その頃にはスウェーデンから現金が消えてしまっているかもしれませんよ…!
クレジットカードは必ず暗証番号付きのものを持っていこう
旅行で使うクレジットカードが、暗証番号付きのものかどうか事前に確認しましょう。
スウェーデンでは、カード決済の際に4桁の暗証番号の入力を求められるからです。
日本のクレジットカードは自筆サインで決済をするパターンが多いと思いますが、スウェーデンではその決済方法が使えない場合があります。
カード無しだとスウェーデン旅行はとても不便なので、必ず使えるカードを持ってきましょう。
キャッシュレス社会のスウェーデンでチップはどう払えばいいの?
スウェーデンではチップは必須ではありませんが、少し高級なレストランや良いサービスをしてもらったときにはチップを払うことがあります(あくまで個人の自由です)。
現金を持っていない場合には、どのようにチップを支払えばいいのでしょうか?
実は、チップもカード払いができます。
スウェーデンのレストランでは、カードリーダーを渡され、自分で支払い金額を入力するケースが多いです。
チップを払いたければ、そこで少し上乗せした額を入力すればOK。
スウェーデンのキャッスレス化の弊害・問題点
キャッシュレスは便利な面がたくさんありますが、その裏側にはさまざまな課題が潜んでいます。
キャッシュレスを支えるシステムに問題が発生した場合、大きな混乱のリスクが
当然ながら、通信機器やネットワークが正常に動いていなければ電子決済は使えません。
つまり、カードの読み取り機の故障や、ネットワーク障害などが発生した場合には混乱が避けられないのです。
スウェーデンのメディアも、サイバーアタックや自然災害(落雷など)で大規模なシステム障害が発生した場合のリスクについて警鐘を鳴らしています。
キャッシュレス化で取り残されてしまう高齢者たちをどうする?
キャッシュレス社会において、みんながハッピーかというと残念ながらそうではありません。
特に次のような人々は、キャッシュレスの恩恵を十分に受けられていないと指摘されています。
スウェーデンの高齢者(65~85才)の5人に1人は、インターネットを使うための機器(パソコン、スマートフォン、タブレットなど)を持っていません。
つまりスウェーデンの約40万人の高齢者は、デジタル社会から疎外されてしまっているのです。
現金の使用が減っていることについて意見を求めるアンケートの結果によれば、高齢者の間では、賛成よりも反対意見が上回っています。
都市部に住む人々と地方都市の住民との間でも、キャッシュレスに対する意見に違いが。
地方都市の住民の方が、現金が減っていることに対し反対の姿勢を見せる傾向があります。
これは、地方都市の方がIT整備が遅れており、その地域に住む人々が十分にキャッシュレス化の恩恵を受けられていないことが要因のひとつと考えられています。
さらに、スウェーデンに新しく移住したばかりの人も苦労を抱えています。
スウェーデンでクレジットカードを作ったり、スウィッシュを使うためには、スウェーデンの銀行口座を開設する必要があります。
しかし、そのためにはまずパーソナルナンバー(スウェーデンでいうマイナンバー)を取得し、IDカードをつくらなくてはいけないのです。
IDカードが入手できるまでの間、日々の生活に不便を感じている人は少なくありません。
こうしたさまざまな理由から、デジタル社会の恩恵を十分に受けられていない人の数は、60万~150万に上るとも指摘されています。
スウェーデンで現金が消えることに対しては反対の声も
こうしたキャッシュレスのあおりを受け、イケアやオレーンス(スウェーデンのデパート)といったスウェーデンの大手の小売業も、国内の一部の店舗での現金支払いを全面禁止にする試みを始めるようになってきました。
しかし大手の世論調査会社(Sifo)が2019年に行った調査によれば、「これからも現金で支払いを続けたい」と回答した人が全体の72%に上っています。
これは前年に比べ、プラス4%という結果。
どうやらスウェーデンの人々は、キャッシュレス化が進んでも、現金が完全に社会から消えることは望んでいないようです。
こうした世論を背景に、2019年6月、スウェーデン政府は、全国どこでも現金が引き出せる環境を確保すべきとの提案をおこないました。
これは、スウェーデンの大手銀行に対し、全国で現金の取り扱いの機会を保証することを義務づけようとするものです。
スウェーデンで急速に進むキャッシュレス化ですが、そこから取り残されてしまう人たちにも配慮する動きが見え始めています。
最新のスウェーデンキャッシュレス情報のまとめ
ここまでの話をまとめると、こんな感じ。
スウェーデンの動向をウォッチすれば、日本がどのようにキャッシュレス化を進めていくべきか答えが見えてくるかもしれません。
また新しい動きがあれば、随時レポートしていきます!
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